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2014年度 カンボジア健康診断活動報告

カンボジア健康診断事業

1 事前協議Ⅰ (プノンペン)

6月3日~6日の間、まずプノンペンにおいてカンボジア保健省及び教育省と協議を行い、広島招聘のプログラム等を検討した。出席者は、保健省 Preventive Medicine Vice Director Hak Sithan氏、Olin lim氏ほか 4名 通訳2名、当方は、広島大学田中教授、同研究室Son氏、文教女子大学藤井准教授、後藤。
協議・合意事項は、以下のとおり。

〇 小学生を対象とした新しい健康診断システムの構築について

カンボジア政府としては、このシステムの必要性に賛同している。システム構築のための取り組みを進めてもらいたい。ただし、倫理的配慮に問題がないことを十分に確認しておきたい。

〇 取り組みの時期、モデル校について

担当者の広島派遣を2014年夏~秋頃を予定する。現地でのパイロットスタディは、秋~冬頃、全体では2年間の取り組みとしたい。パイロットスタディのためのモデル校の数、方法、参加スタッフ数などを後日改めて検討する必要がある。
モデル校となるためには、校長の協力の得られる学校であることが必要である。師範学校の付属校は、取り組みが全国に広まる可能性が高い。

〇カンボジアからの人材の推薦について

人数は1~2名程度。英語によるコミュニケーション、やる気、カンボジア政府としてプランを作成していく人材が相応しい。カンボジアから広島大学に留学している医師を窓口にする予定であり、双方が協力して進めてもらいたい。夏までに人選を行いたい。
このプロジェクトに必要な費用は、日本政府系の財団である自治体国際化協会の助成金で賄われ、広島県を通じて当NGOが担当し広島大学が協力する。
詳細な取り組みの内容については、メール等で連絡をとりたい。

2 事前協議(シェムリアップ)

シェムリアップにおいては、教員養成校並びにワット・ボー小学校を訪問。カンボジアにおける小学生を対象とした新しい健康診断システムの構築プロジェクトについて説明し、パイロット校になっていただきたい旨を要請し了解された。
但し、教員養成校は、2月下旬から3月にかけて教育実習があるので、活動がその時期にかかると難しいかもしれないという意見であった。
ササースダム小学校を訪問し、副校長と協議した。広島からの支援活動については大変感謝しており、今後も継続してほしいが、中国のNGOによる保健医療活動(予防接種か)が、児童の保護者の不信感を生んでいるため、広島の活動がそれと同一視されては困る。慎重な対応を要するという意見があった。
州立病院を訪問。健診に関する協力を要請し了解される。上智大学アジア人材養成研究センター訪問、健診器材の保管などの協力を要請し了解をえる。

3 事前協議Ⅱ

8月5日~7日の間、まず、シェムリアップ州知事を表敬し、州内の小学校及び教員養成校をモデルとして行う、健康診断システムの構築のパイロットスタディに協力要請し、担当部局に指示をおろすとのことであった。
プノンペンでは、保健省を訪問し、6月に要請した派遣人材についての進捗状況を確認した。人材の具体的な条件としては、英語によるコミュニケーションができ、やる気があり、プランニングが担当できること、などを示したところ、保健省技官SEUN SOPHARITH(スウン ソパラ)氏を推薦したいとの回答であった。
広島派遣は2014年秋を予定したい。渡航費、滞在費はじめ研修に必要な費用は、自治体国際化協会の助成金で賄われる。受け入れ窓口は当NGOとし、広島県国際課と県関係機関、広島周辺の大学などの協力を得る。広島大学田中研究室が研修活動の指導と生活支援を行うという形を考えている。
パイロットスタディは、教員養成校とワット・ボー小学校を予定したい。今のところ、11月か12月頃を考えているが、教員養成校は2月下旬から3月にかけて教育実習があるので、活動がその時期にかかると難しいかもしれない。
また、ササースダム小学校では、海外支援団体による健診に対してネガティブな風聞があり、今回は対象にしない方がよいとの見方もある。
再度、州政府を訪問し、副知事及び担当部局長と面談した。シェムリアップ州内の小学校及び教員養成校をモデルとして行う健康診断システムの構築のパイロットスタディに協力要請し了解された。
保健省と協議の上、このプランの企画・遂行に携わる人材を選抜した旨を報告したところ、保健局長は覚書の締結に積極的であり、委細はメール等で連絡を取り合うこととした。

4 カンボジア人材受入研修 10月20日~11月3日

カンボジア保健省技官SEUN SOPHARITH(スウン ソパラ)氏を研修員として受け入れ、集団健診の現場や健康教育について視察した。また、県保健医療推進機構において、住民健診に係るヒアリングを行うなど、健診体制に関する現状を把握した。また、広島県健康福祉局において、意識啓発や保健衛生施策の企画・立案プロセスを研修した。
ソパラ氏の研修は、滞在に関する生活の支援を含めて、広島大学の疫学疾病制御学研究室・田中教授の指導と協力のもとに行われた。
健診のノウハウやデータの管理方法、食中毒・バクテリア・ウイルス感染症等の予防や手洗い・うがい・食餌など、衛生教育・健康教育のレクチャーはもとより、小児科学教室、小児歯科の協力を得て、子どもの健康管理に関する多方面の研修が実施された。
現地視察では、尾道保健所長より地域保健や予防に関する行政の取り組みをレクチャーしていただいた。また備後地方の小中学校、高校、特別支援校の保健室の業務に携わっていた養護教諭OBの方々から、学校保健活動の歴史や実体験などを話していただいた。
府中高等学校では、村上校長、教頭、養護教諭に協力いただき、保健室での生徒の心身の健康管理についてレクチャーを受けた。

5 現地派遣 (シェムリアップ)

2015年3月2日~5日の間、広島大学歯学部と当NGOとの協力のもと、小児歯科医師、歯科衛生士等からなるチームをシェムリアップ州に派遣した。
現地では、シェムリアップ市郊外のササースダム中核小学校、シェムリアップ市中心部のワット・ボー小学校及び教員養成校の付属小学校を訪問し、計1400名の児童に対し、歯科検診や公衆衛生指導、口腔保健指導等のフィールドワークを実施した。
さらに、教員養成校学生を対象とした公衆衛生指導、口腔保健指導に関する研修会を開催、390名の学生の参加を得ることができた。国内受入の際に視察した学校健診等のノウハウを活かし、カンボジアの小学校の現場に合致した質問表及び調査用紙を事前に作成させ、実際に聞き取り調査及び口腔検査を実施した。
歯科検診と併せて、歯の模型を用いたブラッシング指導や紙芝居等を用いた口腔保健指導等も行い、カンボジアの小学校で日常的に導入可能な指導法を実際に経験する機会をもうけた。

《総合的な評価》

日本における就学時健康診断と児童生徒等の健康診断の項目としては、身長、体重及び座高、栄養状態、脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無、視力及び聴力、眼の疾病及び異常の有無、耳鼻咽頭疾患及び皮膚疾患の有無、う歯及び口腔の疾病及び異常の有無、結核の有無、心臓の疾病及び異常の有無、尿、寄生虫卵の有無、その他の疾病及び異常の有無、が含まれる。
これまでのカンボジアにおいて取り組んできた健診活動では、身長・体重測定及び貧血の有無(眼瞼結膜の観察)、腱反射栄養状態の把握胸部聴診による呼吸器・循環器疾患の有無その他甲状腺の触診耳鏡による鼓膜の観察う歯及び口腔の疾病及び異常の有無、が中心であった。
将来的には、上記項目を中心にして、現地医療スタッフによる定期的な学校健診を行う必要があるが、その場合、全身状態、疾病の有無を把握することは、予防と治療による児童生徒の健康維持が目的であるため、医療水準を考慮することも重要である。
ワット・ボー小学校及び教員養成校は、シェムリアップ市中心部に位置し、州立病院やアンコール小児病院などへの受診が可能である。一方、郊外に位置するササースダム小学校は、市内からの距離が約50kmで医療機関へのアクセスが厳しく、保護者の所得格差も極めて大きいため、適切に治療を施すことが難しい。
このため、医療機関のバックアップについて、広島大学及び当NGOから、州立病院やアンコール小児病院への協力を要請し了解を得ているが、カンボジアと日本との距離の遠さから、きめ細かなサポートは困難である。保健省あるいは教育省等の指導による現地保健センター等の組織的な支援が求められる。
また、広島大学の疫学・疾病制御学研究室の協力によって取り組んできた、感染症のサーベイの成果をもとに、罹患率が世界で最も高い結核の検査(塗沫検査)をはじめ、寄生虫卵の有無等も、順次組み込んでいく必要があろう。
こうした感染症をはじめとする疾病は、栄養失調や免疫能力の低下による場合が多いことから、小学校の健康診断に合わせて、健康教育や栄養教育の普及が不可欠である。また、児童の保護者に対する予防知識、栄養知識等の啓発も可能な範囲で取り組むべきであろう。特に、様々な要因による下痢が致命的になる頻度も高く、嘔吐・下痢の際には水分を摂取させない方が良いとの誤解を払拭し、正確な対応策への理解を深めることが重要である。

<今後の課題>

  • 健康診断の所見の記載方法と様式の作成。データの整理・保存日本(広島)の事例等を参考にした、円滑な健診システムの導入
  • 学校医制度の導入や医療機関のバックアップ。健診情報の共有と診療などのフォローアップ態勢の構築
  • 学校と保健センターとの連携。保健省と教育省とのタテ割り行政を解消し、協力体制を整備する。
  • 財源の確保と配分と人材育成。WHOや海外NGO等からの財源確保と地域への配分、人材育成方法の検討

カンボジアひろしまハウスを活用した
プノンペンにおける児童・生徒の健診事業

2014年11月より準備を行い、2015年3月6日、広島大学歯学部、疫学・疾病制御学研究室、アジアの子どもの歯を守る会、社会福祉法人日本国際社会事業団(ISSJ)等の連携・協力のもとに、プノンペンのワット・ウナローム寺院内に位置する「ひろしまハウス」を訪問し、貧困家庭自立援助を受ける児童・生徒やその家族等を対象とした歯科健診、口腔保健指導、歯ブラシを配布しての歯みがき指導を実施した。
当方は歯科医師4名、歯科衛生士1名、医師1名、その他2名に加え、カンボジア国立健康科学大学から広島大学への留学生4名、現地協力者2名の参加を得た。
今回はパイロット調査として、歯科医師により34名の口腔内診査(歯科健診)を実施した。対象とした児童・生徒とその家族は2歳から39歳までと幅広く設定し、小児歯科医と一般歯科医とで協力して実施した。
診査結果は、その場で受診者に文書でフィードバックし、必要に応じてアドバイスを行った。診査後には、口腔保健指導として、間食の摂取スタイルとむし歯の関係とを平易に取り上げた現地語の紙芝居を読みきかせた。
この紙芝居は日本語で作製した後、カンボジアからの留学生等の協力を得て、現地語に翻訳したものである。これまでの我々の活動を踏まえて、カンボジアの文化に即した物語展開にするよう配慮している。また、年齢に応じたタイプの歯ブラシをそれぞれ選択して配布し、歯科衛生士による歯みがき指導を実施した。

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