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2015年度 カンボジア健康診断・口腔保健・朝鮮通信使記憶遺産登録活動報告

Ⅰ カンボジア健康診断事業

2015年5月から事前準備を開始し、NGOスタッフと広島大学疫学・疾病制御学田中研究室スタッフとで、カンボジアにおける健診システムに関する意見交換等を行った。歯学部では、現地活動にかかる材料等の調達、教材作製、カンボジアからの留学生との意見交換を行った。
2015年6月2日~7日の期間で、シェムリアップでは、州政府及び州立病院に協力を依頼し、教員養成校の付属小学校の生徒と教員を対象に、身長・体重測定、尿検査を含む内科健診及び保健指導を実施した。
その間、プノンペンにて、カンボジア保健省、ひろしまハウスを管理している「日本国際社会事業団(ISSJ)に協力を依頼し、翌年3月に予定する「ひろしまハウス」での活動の打ち合わせを行った。

【参加者】

  • PhD      2名(広島大学疫学・疾病制御学研究室教授、助教)
  • 医師      4名(NGOひろしま理事、カンボジア留学生含む)
  • 栄養士     1名
  • NGOひろしま 1名

Ⅱ カンボジア口腔保健事業

2016年3月2日~12日の期間で、シェムリアップでは、州立教員養成校および附属小学校、ワット・ボー小学校、ササースダム中核小学校、トロー・オンドーン小学校、アンコール小児病院において、コンポントムでは、州立教員養成校において、口腔保健指導活動を行った。プノンペンでは、「ひろしまハウス」で、国立健康科学大学歯学部、インターナショナル大学歯学部、プティサストラ大学歯学部等の協力のもとに、口腔保健指導と健診活動を行った。

【専門的人材の確保・関与】

日本人としては、医師・歯科医師・歯科衛生士の有志が参加したほか、広島大学の学部学生も参加し、医療支援を行うに足る人材を確保することができた。カンボジア側としては、保健省のスタッフをはじめ、歯学部を擁する大学の協力と、それらの大学から広島大学への留学生の協力が得られた。
今回は、初めてインターナショナル大学歯学部の学生を受け入れることが実現した。現地語を話す歯科専門のメンバーの関与が増えたことで、より細かなコミュニケーションが可能となり、現地のニーズに合致した活動を提供することができるようになってきている。

【活動内容と成果】

2016年3月には、シェムリアップ州教員養成校の附属小学校において、歯科健診、口腔内写真撮影、フッ化物塗布等の活動を154名に実施し、教員養成校学生に対して「望ましい食習慣について」のテーマで、歯科保健指導の模擬授業を実施した。
ワット・ボー小学校においては、過去4年にわたって実施した教員による保健指導の研修成果を確認し、オリジナルに作成した紙芝居を用いた歯科保健指導、歯科健診、口腔内写真撮影、フッ化物塗布等の活動を355名に実施した。
ササースダム中核小学校においては、ブラッシング、歯科健診、治療(抜歯・スケーリング・セメント充塡)、フッ化物塗布等の活動を233名の児童に実施した。
トロー・オンドーン小学校においては、集団歯科保健指導を午前午後の2回にわたって実施した。午前は、就学支援を受けている小学生を対象に、むし歯と歯みがきについて、午後は、就学支援を受けている小学生の保護者・家族等を対象に、むし歯と歯周病について指導を行った。
また、歯科健診等を345名に実施し、教員研修として、「望ましい食習慣について」のテーマで、歯科保健指導の模擬授業を実施した。トロー・オンドーン小学校及びシェムリアップ州教員養成校附属小学校にて、後日歯科健診結果のフィードバック歯科健診結果のフィードバックを実施した。
コンポントム州教員養成校において、学生を対象に「望ましい食習慣について」のテーマで、歯科保健指導の模擬授業を実施した。

Ⅲ プノンペン「ひろしまハウス」での活動

カンボジア王国プノンペンのワット・ウナローム寺院内に位置する「ひろしまハウス」を訪問し、貧困家庭自立援助を受ける児童・生徒やその家族等を対象とした歯科健診、紙芝居を用いた歯科保健指導、歯ブラシを配布しての歯みがき指導を実施した。
なお、昨年度まで貧困家庭自立援助は日本国際社会事業団(ISSJ)によって支援されていたが、現在その支援が終了し、今後新たな資金援助を募っている状態である。ひろしまハウスへは、午前と午後で異なる児童が通ってきているため、一連の活動を午前午後と2セット実施した。
まず、挨拶と説明の後、歯科医師により口腔内診査(歯科健診)を実施した。午前19名、午後9名が受診した。対象とした児童・生徒とその家族は5歳から31歳までと幅広く、小児歯科医と一般歯科医とで協力して実施した。診査結果は、その場で受診者に文書でフィードバックし、必要に応じてアドバイスを行った。
診査後には、歯科保健指導として、おやつの食べ方や歯の大切さについて取り上げた現地語の紙芝居を読みきかせた。この紙芝居は広島市歯科医師会が作成したものを寄贈いただき、カンボジア子どもたちに分かりやすいように文化的背景を考慮しながら現地語に翻訳したものである。
また、年齢に応じたタイプの歯ブラシをそれぞれ選択して配布し、歯科衛生士による歯みがき指導を実施した。
ひろしまハウスに通う子どもたちは、例えば地方から出稼ぎに出てきた貧困層の家族等であり、経済的な事情だけでなく、親が読み書きできないために出生届を提出していない等の理由から正規に学校に通えないといった事情を抱えている。
中には長期的に通ってくる子供もいるが、多くは家族の状況に合わせて一時的にプノンペンに滞在し、利用している。そのため、時期により子どもの数はまちまちであり、本年は昨年訪問時よりも子どもの人数が少なかった。
彼らは、金銭的理由や歯科的知識がないために受診経験がない者がほとんどである。診査結果をその場で返却したことで、普段から気になっていた点、口腔内で困っている点などについて質問を受け、それぞれにアドバイスを行うことができ、非常に好評を博した。ブラッシング指導についても、これまでに受けたことがない子どもたちが大半であり、全員が熱心に取り組んだ。
ひろしまハウスというハード面が整っており、昨年に引き続き、スムーズに活動できた。しかし、ISSJによる支援が打ち切られたとの状態であるため、今後のスポンサー探しに対して、協力できるかどうか検討する必要がある。
現地人材の育成を図るために、昨年同様、カンボジアから広島大学へ留学中の学生の参加も受け入れた。彼らは現在広島大学で学んでおり、将来はカンボジアで歯科医師国家試験を受験し、歯科医師となる予定である。現時点でカンボジアの歯科大学等と大きな架け橋となっているが、将来的には彼らを核としたメンバーに活動をバトンタッチし、現地の方による活動をバックアップしていけるように構想している。
ひろしまハウスに限らず、活動全体としては、今回新たにインターナショナル大学歯学部からの参加希望者を受け入れることができた他、新たにトロー・オンドーン小学校、コンポントム州教員養成校とも協力関係を築くことができた。
教員養成校において、歯科保健指導のできる教員養成を行うことは、少ない人的資源でより多くの結果が得られるため、今後は、教員の研修会を恒常化し、計画的に全国展開に結び付けたいと考えている。
また、今回は、広島大学越智光夫学長はじめ、国際担当、社会産学連携担当、研究企画担当理事など7名の視察地に、ひろしまハウスでの支援活動を組み込み、この事業の必要性の認識を深めていただいたことで、今後の連携の強化につながるものと考えている。
活動の成果は、NGOひろしまのHPにアップして公表するほか、学会誌等への投稿、活動報告会の実施を予定する。歯学部としては、これまでの成果について、2016年5月開催のアジア小児歯科学会にて発表が決定している。また、歯科保健指導の実際について、2016年7月開催の日本歯科医学教育学会総会学生セッションにて発表予定である。

【総合評価】

2015年度は、被爆70年にあたる。被爆地ひろしまからのカンボジア復興支援が、市民、行政、大学、NGOの連携によって、「ひろしまハウス」で行われたのは、平和貢献構想を具現化する記念すべき事業であり、広島が引き続き世界の平和への貢献をめざすためのチャレンジングステージであったと言える。
今のところ武力紛争の再燃は危惧されていないが、経済社会システムの再興への道のりは遠く、市民生活も未だ安定してはいない。今回の活動は、特に厳しい生活を余儀なくされている都市部の貧困層の児童・生徒を対象とし、子ども達の健康づくりが復興の礎になることを示した。
またNGO、大学の教職員、学生有志の協力を中心に、カンボジアから広島大学への留学生やプノンペンの大学、保健省などのメンバーによって取り組まれたのは、復興支援活動が多様な組織や人材の参画によるべきことを証明した。
今後は、さらに広島の経験を活かし、内陸部・農村集落での活動とリンクしながらカンボジア全体の児童・生徒の健康レベルの向上を目指して、明日への希望を市民と分かち合いたい。

Ⅳ 朝鮮通信使記憶遺産登録事業

朝鮮通信使寄港地ルートの世界遺産登録に向けては、2012年度、釜山文化財団、駐広島韓国総領事館、韓国民団広島県支部はじめとする中国地方の支部、港町ネットワーク瀬戸内、朝鮮通信使縁地連絡協議会、多文化共生ひろしまとの協力のもとで「朝鮮通信使フォーラム実行委員会」を組織し、福山市の後援で、広島県立歴史博物館で国際シンポジウムを開催した。
それ以来、「日韓の国境を越えた世界遺産登録の共同申請に向けた組織体制のあり方」を広島大学等との協力のもとで研究する一方、多文化共生事業と連動した形で、日韓交流を進めながら、関係団体との連携を深めてきた。
特に、駐広島韓国総領事館が行う様々な事業に参加・協力し、日韓の文化交流や啓発事業への貢献を進めてきた。
世界記憶遺産の共同申請は2016年1月、対馬市において調印され、2017年度には実現する運びとなった。2017年3月には、福山市の市制100周年事業の一環として、縁地連絡協議会の総会が福山市で開催される予定である。
朝鮮通信使寄港地ルートの中核である、福山市の鞆の浦のまちづくり、多文化共生事業を中心にしつつNGOひろしまとしての国際交流・貢献事業の推進にはずみをつけたい。

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